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未来科学の平行世界 第4章 大中華合衆国への道 その③

 香港は、長年イギリスの植民地として支配されてきたが、ひとつ幸いだったことがある。
 それは、イギリスの統治下にあっては、自由市場経済が浸透していて、資本主義の精神が根付いたことである。

 自由市場は、モノやサービスに対して、購入者がお札の形に変えて票を投じることにも似ている。
 より良いサービスや購入者が是非とも手にいれたい商品には、人々が貨幣の形に変えて投票を行うのである。
 よって、人々にとって有益なるものを提供する人には、より多くの貨幣(票)が集まり、繁栄・繁盛がもたらされるのだ。すなわち、自由市場経済の発展は、民主主義の発展と軌を一にするということがいえるのだ。

 ゆえに、中国に放たれた自由の風は香港から始まった。
 そして、上海や南京などの臨海南部商都を中心に広がってゆき、自由主義革命の嵐として中国全土へと吹き渡ってゆくことになったのである。

 最初は、表現の自由と政治参加の自由を確立するための政治運動から口火が切られていった。
 表現が自由であることは、思想・信条の自由に基づいた具体的な行動価値ということができる。
 自分の思想を言葉として発することが、何ものにも抑圧されることがないということは、政府への批判も自由であるし、自分たちの権利を要求するのも自由なはずである。
 政府や権力者などの顔色をうかがい、その政策や方針に逆らわないように、政府決定の下にある枠組みの内においてのみ言論を発することが許され、その制約な中においてのみ議論をすることが可とされ、さらに結社をつくって活動することが許可される・・・。
 政府のつくった檻の中でしか表現することが許されないのでは、自由は無いといえるだろう。
 自由市場の下に、より多くの人々に幸福をもたらさんという意欲がある人は、新しい発想、新たな発明、奇想天外な工夫などを開発し、それを多くの人に発信する。
 自らが生み出した価値の真価を問う行為をなそうと、また自由に活動を始めるのである。
 それは、その行為を妨げるものへの批判となり、衝突となり、具体的な相克となってゆくこともある。政治権力が課してくる枠組みを、あらゆる不当な制約を撃破し、いかなる困難をも打ち砕き、本物の自由を実現しようとするものなのだ。

 かねてより、民主化を求める人々が、一党独裁政治を緩める意思のない共産党に対して、開かれた議会による議会制政治を求めてきた。
 それは、政治参加の自由を求める集会として、香港を皮切りに中国各地の主要都市へと伝播・拡散して、大きく広がってゆく気配を見せ始めていた。

 当然、習近平は、人民解放軍に集会の解散指令を出した。
 それは、場合によっては手段を選ばぬ武力行使、有無を言わせぬ抹殺と弾圧の許可をも包含してのものだった。
 かつて、自由化・民主化を求めた天安門における集会は、人民解放軍の戦車隊によって蹂躙され、多くの人間が戦車によって踏み潰され、圧殺され、その若い命を失った。自由を心から求める人々の命と共に、自由化の希望は壊滅するに至った。そして、共産党の政治的指導に反しない範囲での自由以外は、一切認められなくなってしまった。
 それが、当時の政治的主導者である鄧小平が、あくまでも貫いた、治国の精神だったということなのだ。

 今回も、そうなるはずと思われていた。
 習近平は、自分の掌握する権力とそれによる統帥の指揮系統は、未だ万全であると信じていた。
 しかし、現実は、違った方向へと事物は流れていたのである。

 香港の中環、金鐘、銅鑼湾、旺角などの繁華街において、自由な選挙と人々の開かれた議会の開催を求めた人々が、平和的な座り込みによる抗議の形でもって、町の一角の占拠を続けていた。
 それに対して、主として警官隊が対応にあたり、集会の中止と即時解散を求めての小さな衝突がおき始めていた。
 自由を訴える人々は、こん棒やナイフすら携行していなかった。
 そのように、まったく無防備な彼らに対して、警官隊は威嚇発砲をし、さらには、集団の中に催涙弾を打ち込んだ。
 いったん逃げざるを得なかった彼らであるが、防毒マスクやゴーグルで身を固め、また少しずつ参集を開始し始めた。中には、簡単なガーゼマスクや、安全メガネ、雨傘程度の軽装で集ってくる者が続出した。
 その対応に、やがて武装警官も手を焼き始めただった。


「警官隊の皆さん。警官隊の皆さん。どうか聞いてください。私たちは、自由を求めているだけなんです。思想・表現の自由を求めているだけなんです。人として、尊厳ある人生を歩みたい!と、そう訴えているだけなんですよ。あなた方は、何を守ることを使命としているんですか? あなた方は、何のために存在しているんですか? 私たちは、排除されるべき悪なんですか? 犯罪者なんですか? 私たちを排除することで、いったい何が守れるというんですか? 私たちが、いったいどんな罪を犯しているというんですか? 私の言っていることの、何が間違っているんですか?」

 拡声器を持ったリーダらしき若者が、声を張り上げて警官隊に問いかけていた。

「私たちは、法を破ろうとしているのではありません。犯罪をしているわけでもありません。私たちは、銃火器などの武力によって正義を押し通したいのでもありません。ましてや、国を転覆させたいわけでもないんです。私たちは、人間ひとりひとりの考えを大切にし、ひとりひとりの思いをくみ取っていけるような政治を目指したいといっているんです。自自分の意見を自由に述べることができ、公開された場で、議論を尽くして最善の方法を模索する。そのような開かれた議会制民主主義の力でもって、国も、国民も、その未来も、すべてを多くの人の力でもって創りあげてゆくような世界を開きたいんです! 今のような、共産党の一党独裁、それも、ごく一部の権力者による独裁政治にこそストップをかけて、開かれた議会の中で、万人の創意を集める繁栄主義、そう、本物の民主主義をこの国に持ち来たらせたいだけなんです!」

 彼の心からの訴えに、警官隊の動きは止まる。
 彼の言葉に、繁華街に集まった人々の耳が釘付けになっている。

「私たちが住んでいる今のこの体制はどうですか? 不正と悪徳が蔓延り、皆が自分の利権を守ることにのみ心を砕いている。汚職と賄賂がいっこうにおさまらず、それへの取り締まりさえ、飽くなき権力闘争、共産党内の権力争いの道具にされてしまっているじゃないですか! 私は、そんな世の中をこそ、変えなければならないと思うんです! どうですか? 違いますか? ねえ、警察の皆さぁ~ん!」

 彼の渾身の叫びに、武装警官の目が泳ぐ。
 その様子を見守る都市の住民たちにも、新しい意識が芽生えていた。
 彼らの座り込みに合流してくる人々も現れ、彼の心からの叫びに、拍手や声援がおき始めたのである。

「そうだー! 警官隊! お前たちは何を守ろうとしているんだー!」

「君たちが守るのは、私たち一般の国民、いや、自分の家族じゃあないのかぁ!」

「お前らも家に帰ったら、子供たちが待っているんだろう? その子たちを本当に幸せにするのは、どっちなんだー!」

「そうだー! 彼らは、今の政府を潰したいっていってるんじゃないぞー! 違った意見を持った勢力が、話し合ってより良い世界をつくるための議論の場を与えて欲しいって言っているだけじゃあないか―! 今の政府が変わらないからこそ変革したい! 変えるためのその場を与えて欲しい! そう言ってるだけだろー! そのどこが悪い! お前たちは、何を取り締まろうとしているんだー!」

「そうだ、そうだー! このままじゃあ、永遠に今の状態が続くだけだぁ! 今、変えなければ、永遠に変わらないぞぉー! このままでは、永遠の停滞と、閉塞して窒息しそうな世の中がが続くだけだぁ~!」

「共産党の幹部が、どれだけ利権を得ているか、知っているかー! 賄賂でしこたま稼いだその資産を、なんと海外に流出させて、もしもの時の逃亡資金として隠している奴らもいるって聞いたぞぉ! それが、正義なのかぁ? それが、この国の政治を動かしている統治者なのかー! そんなやつらの特権を守り、やつらの利権を維持するために、君たちは秩序を守ろうというのかぁー! そんなもん、守る価値があると本当に思うのかぁ!」

 初めに声を張り上げた人間ではなく、周囲に集った人々の中から、どんどん大きな声があがってくる。
 中には、そばにいるデモ参加者の拡声器を奪い取って、声高に叫び始める者も現れた。
 武装警官たちは、戦闘モードで構えてはいるが、それ以上びくとも動けなくなっていた。もはや誰を取りおさえれば良いのか、分からなくなっていたからである。
 集会のリーダが、皆の声援や応援にこたえる。

「僕らは、今の政府が腐っているんだと思います。政府の運営が間違っているんですよぉ。でも、そんな政府であっても、僕たちの国の政府であることには変わりありません。だからこそ、訴えているんです。だからこそ、こんな行動に出ているんです。どうか、私たちに、意見を言う場を与えて欲しい! 私たちに、より良い提案ができる場を与えていただきたいんですよぉって・・・! 衆知を集めて、もっともっと良い国つくってゆくために、その議論をする場を与えて欲しいんです。どうか私たちの願い、私たちすべての国民に、積極的に政治参加できる”自由”を認めていただきたいんですよぉ!!」

 ドドドドドォっと、歓声とどよめきが周囲を包んだ。その力に、警官隊の力が一気に抜け落ちてしまった。
 そう、勝負ありだった・・・。
 デモ参加者の集団には、歓喜が充ちあふれた。

 うったえれば分かってもらえるんだ。
 伝えようとすれば、きちんと伝わるんだ。
 人として、仏性をもっている生命として、人は信じるに値する素晴らしい存在なんだ!

 そんな喜びに満たされ、彼らの顔に、笑顔が満ちた。
 が、次の瞬間、彼らは微細なる振動と微かなる金属音が感ぜられた。
 それは、香港監督省が事態を重くみて、中央政府に派遣要請し、その結果、進軍してきたものであった。

 繁華街のビルの谷間に、人民解放軍の地上戦車部隊が進撃する音が響き始めた。
 しばらくして、太い砲塔を誇示した戦車が道路をふさぐように、三列縦隊で直進してくるのが見えた。
 砲の横にある二つの赤い星が特徴的なその戦車が、緩やかな速度でじりじりと進んでくる。
 その姿は、圧倒的な威圧感によって、群衆と警官隊の両者を目に見えない圧力によって押さえ込もうとしているかのようであった。

 戦車隊は、あらゆるルートから攻囲するように距離を狭めてきた。
 さらに速度を緩めて、じりじりと距離を詰めてくる。
 そして、道路をふさぐように進軍を止めた。
 これによって、中央市街地に結集していた人々は、デモ隊をはじめ、それに加担した民間人のすべてが、そして、周囲のビルで野次馬のように推移をただ見守っていた人々であってさえ、もはや逃げ場が無いように封じ込められる形となってしまったのである。

 自分たちとは充分な距離があるように見えるが、それはあくまでも彼らの射程範囲内であって、自分たちの命が、すでに彼らの手によって、一方的に握られていることを感じさせる充分なものであったのである。
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青の錬金術師

Author:青の錬金術師
ご訪問くださり、まことにありがとうございます。
このブログでは、幸福の科学の信者として、エル・カンターレ文明建設に資するべく、様々な新しい視点や発見などを提供してゆきたいと考えています。
私といたしましては、科学と宗教を融合してゆくユニークなサイトにしたいと志しています。

御愛好のほど、どうぞよろしくお願いいたします。
1962年生まれの薬剤師です。

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