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未来科学の平行世界 第4章 大中華合衆国への道 その⑤

 これが、革命の始まりの物語である。

 その後の展開を、簡単にではあるが記しておきたい。

 譚本宏香港司令長官の演説は、メディアを通じて全世界に流された。
 その一部が抜き出され、インターネットを通じて中国国内にも拡散していった。
いくらネット警察がブラックアウトさせて取り締まろうとしても、どこからかそれは現われ、ネットではなくオフラインにおいて、人から人を通じて口づてに、口から耳へと人々の間を流れてゆくことを止めることはできなかったのである。
 人々が自分の思いをつなげ、その熱情を相手の心に吹き込み、拡散から浸透の無限連鎖へ波及していったのだった。

 それは、人民解放軍の中に深刻な亀裂を生じさせた。
 小さな諍いが瞬く間に拡大し、異なった考えをもつ人々によって、軍の中が四部五裂していった・・・。
 香港を真似た都市国家革命が、中国各地の大都市で勃発していった。

 満州では、瀋陽軍が中心となって、新たなる時代の清王朝が復活していた。
 上海においては、企業家たちが軍人を指揮する形で、新しい形態の武装企業連合国家が成立した。
香港に隣接する深圳においても、天津においても、成都においても、武漢、南京、重慶、青島、洛南、洛陽、淮南、大連、西安、長春・・・。そう全国各地、全中国において、彼の志に共鳴した志士たちが立ちあがり、大きな大きな自由化革命の潮流が動き始めたのである。
 しかし、北京政府、およびその親衛隊たる直轄軍も手をこまねいて見ているだけの筈はなかった。そう、強力な武力弾圧が始まったのである。
 ただ、彼らの強大な力をもってしても、13億もの人々からあふれくる思いを押しとどめることなど到底できなかったのである。当初は優勢に反乱軍を制圧し、都市の治安を回復させていた共産党直轄軍であったが、いずれ大敗北を喫する日からは逃れることはできなかったのだった。

 分水嶺は、成都においておとずれた。
 その第一原因は、共産党直轄軍の兵士の士気が激烈に落ちていたことにある。
 彼らは、自分たちの戦いに大義を見出すことができなくなっていたのである。
 彼らとて故郷に家族があり、地方に友がいる。彼らの心にも、自分たちが名何をしているのかという真実が浸透し始めていて、自分たちの立ち位置に疑問を抱くものが続出し始めていたのである。
 故郷の家族を養うには、生計を得ているこの解放軍という職業は捨てられない。ただ、彼らには、地元の農業と兼業的に志願しているものも数多く、いやほとんどがそうであったゆえに、その層から綻びが出始めたのである。
 それに対して、反乱軍は、負けても負けても、またどこからか集まってきて、あくなき抵抗を継続してくる。直轄軍兵士は、その抵抗勢力の中に、時に自分の地元で見知った顔を見つけてしまうのだ。そんな時、彼らの心の中には、疑問と躊躇が差し込まれ、意欲が激しくそがれてしまうのだった。

「いったい、僕は、何をやっているのだろう?」

 自らの銃弾の先に、幼馴染の姿を目にし、勝利の後にその遺体の前に立ち尽くす彼らは、果てしのない悩乱の中におかれてしまうのだ。そしてそれが臨界点に達した時、彼らは戦闘を放棄し、抵抗軍の中に身を投じてゆくしかなくなってしまったのだった。
 各地で、直轄軍が崩壊し、抵抗勢力の勝利が続き始めた。
 北京に陣取る習近平は、もはや北京政府の直轄地のみが残された唯一の陣地であり、彼の出身地である南部地域さえ、もはや自分の意思は届かなくないことを実感する。

 完全なる敗北である。

 彼は、今、自分が領袖を務めるこの北京政府においても、もはや命運が尽きたことを悟っていた。
 すなわち、北京政府が、この分裂した革命政府諸国の中で生き続けてゆくためには、彼自身の首を生贄として差し出す以外に道が残されていないことを確信したのである。

 もはや彼が生き残れる道はただ一つ。
 今や、レームダックとしてお飾りの権力者に座らせられ、生贄として吊るされるであろう直前にある彼の地位において、唯一可能である選択・・・。そう、国家主席によるミサイルテロという前代未聞の決断・・・。
 全世界を恐怖の淵に叩き落とし、再び、残忍さと凄惨さ、そして力が支配し、いかに人間性を捨てられるかが勝負を決する世界として蘇らせるための・・・、彼をして、もはや人間を捨てさせ、悪魔の化身として蘇生させる恐怖のサバト・・・。
 彼は、その最後の引き金を引く決断をする。
 そう、弾道核ミサイルによる世界無差別攻撃である。

 死なばもろともの中に活路を見出す・・・。
 恐怖と混沌が世を覆う中に、大逆転への勝機を生み出すために・・・。
 ただ、そのために、たとえ数千万、数億単位の犠牲者が出ようとも、我が道をゆく覚悟を固めたのである。

「また再び、時がたてば、人間など勝手に増えてくるものだ。一時的なる大量死など何ほどのものか・・・。権力と恐怖による統治、それによる恒久平和のためには、当然支払われる代償というものだ・・・」

 これが、唯物論的なる合理性、裏宇宙の帝王としての結論というものだった。
 彼は、逆らう側近はすべて抹殺し、未だ従い来る部下のみによって核ミサイルのスイッチを独占した。
 追い詰められているがゆえに、一切の躊躇は無い。
 先ずは、海南島近隣に隠されたミサイル基地への発射指令を出す。
 しかし、それはまったくの無反応…。すでに、その地域は、北京政府からは独立して機能するようにシステム改変がなされていたのである。
 習近平は焦る。
 次は、四川省の山中奥地に建造された中国最大の核ミサイル発射基地へのアクセスを試みる。しかし、これも拒否され、微塵たりとも動かない。
 彼に残された選択は、もはや一つしかなかった。
 それは、大陸奥深く、人の住まないゴビ砂漠の奥地に建設された秘密ミサイル基地・・・。これは、人民解放軍の中でさえあまり知る者はいない施設であった。
 アクセスキーを操作する手は震えている。それは怒りと焦り。人がここまで堕ちるかという究極の悪のきわみ・・・。
ピーという警報音とともに、明かに手ごたえが感ぜられた。
 生きていた・・・。ここまでは、まだ、反乱軍の手が及んでいない。
 中国における秘密基地的な扱いを受けてきたこの地域は、革命軍との苛烈なる情報戦争の中においても、いまだ切り崩されていなかったのである。
 すぐの発射へのプロトコールを進める。介在する人間が最小に設定されているこの秘密経路は、いまだすべてが彼の手中にあり、発射へのカウントダウンに到るにはさほど時間はかからなかった。

 彼は振り返る。この地位に到るまで、何人のライバルを失脚させ、命を奪い、闇の中に葬り去ってきたか・・・。
私のこの選択によって、場合によっては億単位の人間が命を失うだろう。しかし、それは目的のための代価として、当然の帰結であるかのようにも感じていた。

 犠牲が多いほど、得られるものも大きい。

 そう、それは真理の一片をあらわしているが、それがすべてではない。その行く先、向かう先が天国か地獄かの判別ができていない点において最大の過ちといえるのだけれども、追い詰められた彼にあっては、それを考える余裕など一切なかったのである。
 
 一縷の勝機に全霊を賭ける。それが、彼の勝利の法則でもあったし、それが彼のすべてでもあった。

 水爆を組み込んだ核ミサイルが炸裂し、全世界が恐怖に震える。
 そして、いかなる報復のカギが引かれるか?
 そのぎりぎりの駆け引きと選択の下に、世界は一時期破滅と死の中におかれることだろう・・・。
 そして、それにいかに立ち向かい、血路を開き、生き残るかということがサバイバルの条件だ・・・。

 そんな意識に思いを集中しつつ、彼は、天安門にある本部中央司令塔の地下奥深くにつくられた最新鋭の核シェルターの入り口へと向かっていた。
 それは、従来の核シェルターなら貫き通せるアメリカの最新鋭技術すら及ばない、地底奥深く数百メートルに建造された核シェルターである。原子力によって駆動されたタイムカプセルのごときこの施設において、コールドスリープ状態で長期生存を可能にするべく計画されたものである。
 何重にも重ねた強靭なる防御壁に守られ、内側からロックされればもはや外からあけることは不能となる。そこに、数人の側近ともに立てこもるのである。
 未曾有の核ミサイル戦争を生き抜き、その後の荒廃せる世界の覇者となることのみを夢見て・・・である。

「しばしの別れか・・・」

 彼は、そう呟いて、地中深くへ向かうエレベーターに乗り込んでいった。
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青の錬金術師

Author:青の錬金術師
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このブログでは、幸福の科学の信者として、エル・カンターレ文明建設に資するべく、様々な新しい視点や発見などを提供してゆきたいと考えています。
私といたしましては、科学と宗教を融合してゆくユニークなサイトにしたいと志しています。

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1962年生まれの薬剤師です。

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